井上銘さんの「Solo Guitar」というアルバムが好きなので、感想を書いてみました。
ジャンルレスな選曲
アメリカのロックバンド、イーグルスの名曲「Desperado」から始まったかと思いきや、一転してボサノヴァの巨匠、アントニオ・カルロス・ジョビンの「Chega De Saudade」、サックス奏者・井上淑彦の軽やかなオリジナル「Fireworks」へと続きます。「Sunny」が入っているところもジャズ・ギターファンには嬉しいポイントです。
井上銘さんのオリジナルも3曲収録されています。異国情緒でブルージーな「A Memory Of The Sepia」、ノスタルジックな「Winter Song」。なかでも、次第に重厚なロック・バンドのジャムセッション顔負けの熱を帯びてくる「Afterwords」は必聴です。

「黒子」に徹する端正な演奏
全編アコースティックギターで演奏されていますが、コードワークは端正で、ピッキングと押弦がとても丁寧です。基本的にはアコギは弦高が高かったりネックも太かったりと演奏の難易度が高い楽器ですが、それを一切感じさせません。
印象的なのは、弾き手よりも曲を活かそうとしている点です。
誤解を恐れずに言えば、ジョー・パスのソロギターは金太郎飴的で、どの曲を聴いても「ジョー・パスのプレイやテクニック」を聴いている感じがします。
対してこのアルバムの井上銘さんは「黒子」的で、あくまでも曲そのものを前面に立たせているような気がします。
そして矛盾するようですが、そのような演奏のすべてが匿名的ではなく、井上銘のものでしかないサウンドなのです。
数学的プレイを飛び越える「熱」
ジャンルレスな選曲とも重なりますが、「Afterwords」では、弾き手の熱が伝わってきます。
ややともすると、上手いジャズギタリストは高度に数学的であるような印象に終始することがあります。もちろん井上銘さんも高度な数学的プレイはお手の物だと思うのですが、一個そこを飛び越えてくるようなパワーと熱があるのです。
短編小説集のような世界観
ジャンルレスな選曲もあいまって、まるで短編小説集のように、一曲ごとに表情の異なる物語が感じられる作品です。7曲30分の短く、カラフルな小旅行。
このアルバムは「ジャズ・ギタリストのソロギター作品」というスコープだけで聞こうとすると、捉えきれない魅力があります。
ここで行われているのは、ただ、ギターを通じた飽くなき探求です。

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