リットー・ミュージックより出版されている「JAZZ STANDARD BIBLE」というジャズ・スタンダードの楽譜集があります。
セッションで定番の227曲が収録されており、現在のセッション・シーンにおいて欠かすことの出来ない存在になっています。
ジャズメン必携の書と言っていいでしょう。
↓こちらはハンディ版
この記事では、そんな「JAZZ STANDARD BIBLE」についてご紹介したいと思います。
この本のメリット・デメリット
実際にこの本を使っている経験から、メリットとデメリットの両面でまとめました。
私の個人的な感想から率直にお伝えしたいと思います。
まずはデメリットからご紹介します。
デメリット
コードの指定が細かすぎる箇所がある
曲によって、記載されているコード進行が細かすぎる傾向があると思いました。
例えば、シンプルにⅠコードと捉えても良さそうなところ、あらかじめⅡ-Ⅴ分解されているような箇所が多いと思いました。
演奏者側の解釈の自由度の高さがジャズ演奏の魅力でもあるため、素材となる楽譜自体は極力シンプルなものでも良いのではないか、と感じることがありました。
ただし、これはセッションの現場で実際に多様されているコード進行を示している、より実務的・現場的な内容であるとも感じました。
また、シンプルなコード進行に自分なりの解釈を加えられるレベルの人であれば、楽譜のコード進行の意を汲むことも可能といえます。
その意味では、多少コード進行の指定が細かくとも、本質的に困る人は少ないのではないでしょうか。
やや高価
つづいては、価格がやや高価なことです。(2024年6月現在、税込3,850円)
もっとも内容を考えれば決して高くない、むしろ安いです。
本書のまえがきにもある通り、著者の納浩一さんがジャズを勉強していた頃は、同様の楽譜が1万円近くしたそうで、この本も手軽な価格で良質な内容を提供することを目指しています。
ただ、ジャズを勉強している若者にとっては、決して安いとは言えない価格であると思いました。
付属CDはなくても構わない
また、この本には付録としてCDがついています。
内容としては、著者のグループによる演奏です。本に収録の227曲のうち、20曲を取り上げています。
演奏はとても素晴らしいので、ぜひ聴いていただきたいです。
とはいえ、音源などで手軽に他のミュージシャンの演奏を参照できる現代において、あえて著者グループの演奏をつける意味はそこまでないように感じました。むしろ、CDはなしでも構わないから、その分価格を下げた方が、より手に取りやすい本になる気がしました。
ただし、繰り返しになりますが、演奏は一流ミュージシャンによるものです。必聴ですので、手に入れた際には、ぜひ繰り返し聴いてほしいです。
定番曲でも入っていないものもある
最後は収録曲についてです。
この曲が入っていないの?と感じることが何度かありました。
曲によっては、続編である「JAZZ STANDARD BIBLE2」に収録されているものもあります。
ただし、選曲については、100点満点を求めるのは酷だとも思います。
なぜなら、コミュニティや時代によっても演奏される曲の傾向には違いがあるからです。
また、様々な曲を網羅しようとすればするほど、収録曲が多くなり、本としては分厚く、重くなり、使い勝手が悪くなるからです。
さらに、様々な著作権などの問題があることも考えれば、これだけの内容を収録してくれたことには、やはり感謝しなければならないと思います。
メリット
つづいて、この本を使うメリットについてもお伝えしていきたいと思います。
見やすい
まず第一に見やすいです。
ひとつは、表記がはっきり、大きく印刷されているという点です。
著者も語っているように、セッションの現場で老眼の方でも見やすいようにという配慮がされています。
また、ページ割りも基本的に1ページに1曲という配置になっています。
1曲が複数ページに渡る場合も、見開きで一望できるため、演奏中にページをめくる必要がありません。
また、1段あたり4小節あるいは8小節が基本となっている記載も見やすいです。
これらのことは、当たり前のようですが、楽譜によっては、
最後の1行だけが次のページに飛んでいたり、1段ごとの小節の数がばらばらだったりします。
そのような楽譜を読むストレスから解放されるということだけでも、とても大きなメリットです。
著者が現役ジャズ・ベーシストという安心感
つづいて、この本の著者が現役のジャズ・ベーシストであるという安心感も大きなメリットです。
デメリットのところで、コードの指定が細かすぎるところがあるとお伝えしました。
しかし、それも現役ジャズ・ベーシストの膨大な経験値に裏打ちされているがゆえのものです。
また、楽譜によっては、全体的にこの本のコード進行は信頼できない、と言われているものもあります。
この本では、そのような半信半疑は捨てても構わないと言っていいでしょう。
仮に誤植などがあった際には、リットー・ミュージック社や著者により訂正がありますので、その点も安心できます。
実際のセッションの現場で演奏される定番曲から選曲
著者の納浩一さんは現在もセッションの現場に立つ、現役のジャズ・ベーシストです。
そんな著者が、セッションの現場でよく演奏される曲から選曲したのが本書。
そのため、実際には全然セッションで演奏されないような曲は入っていないです。
セッション参加に向けて、実践的な曲を練習できるのも本書のメリットです。
関連書籍で学習できる
最後は、この本には様々な関連書籍があります。
続編である「JAZZ STANDARD BIBLE2」、
歌詞つきで歌ものをとりあげた「JAZZ STANDARD BIBLE FOR VOCAL」、
スタンダード曲を使った理論書「JAZZ STANDARD THEORY」、
アドリブ練習に特化した「JAZZ STANDARD BIBLE FOR ADLIB」などなど。
自分のレベルやニーズに合わせて、関連書籍で体系立てて学習できることも嬉しいポイントです。
口コミ
つづいて、各種通販サイトなどで気になった口コミを探しました。
ネガティブとポジティブでそれぞれご紹介します。
まずはネガティブな口コミです。
ネガティブな口コミ
歌詞がついていないのは残念
歌詞がついていないことを指摘する口コミは多く見受けられました。
スタンダード曲の多くは、もともとポピュラー・ソングなどの歌ものであることも多く、歌詞の意味を知らずに練習することはナンセンスだとする意見が多かったです。
なお、歌詞がついている楽譜集としては、「スタンダードジャズのすべて」がおすすめです。
分厚くて折り目をつけるの大変なときもある
本の分厚さを指摘する意見もありました。
厳選された曲集とはいえ、227曲が収録されているため、決して薄い本ではありません。
自分が演奏する曲が限られている場合などは、あらかじめ当該の曲だけをコピーして持ち歩くのもいいでしょう。
ポジティブな口コミ
i Real Proと併用すると良い
これは有効な練習方法についての口コミでした。
iRealProという、伴奏をしてくれるアプリといっしょに使うことでより効果的に練習できるというものです。
付属のCDは20曲のみということもあり、アプリの伴奏を活用するのは、とてもいいアイディアだと思います。
知人が皆この本で演奏している
これは、この本を買うべき本質的な理由のひとつです。
現在、セッションのお店に行くと、多くの場合この本が常設されています。
また、曲を演奏するときにもこの本が前提とされていることがほとんどです。
セッションで知らない人たちと演奏が成立するのも、この本のような共通認識が存在しているがゆえなのです。
まとめ:JAZZ STANDARD BIBLEを手に入れよう
ここまで、「JAZZ STANDARD BIBLE」について、メリットやデメリット、口コミなどをまとめてきました。
結論としては、ジャズを学ぶ人であれば、必ず手に入れておきたい本だと思います。
著作権の問題は難しく、同種の本がどんどん新規参入してくるということも考えづらいです。
そのため、今後もこの本はジャズを学ぶ人たちにとっての共通認識でありつづけるでしょう。
ぜひ一日もはやくこの本を手元に置いて練習を開始しましょう!
今回の記事は以上です。
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