【内なる歌を聴け】バーニー・ケッセルが語るインプロヴィゼーションのコア

ジャズ・ギタリスト、バーニー・ケッセルのレッスン動画をご存知でしょうか。
元々VHSで発売されたらしいこの映像。
その大部分がYouTubeで公開されています。

この動画の中で彼が伝えようとしたことを一言で表すなら、それは「内なる歌を聴く重要性」だと思いました。
以下、私自身の意訳を大胆に織り交ぜつつ、この動画についての感想をまとめたいと思います。
正確な表現やこまかいニュアンスについては、動画をご覧ください。

“what you hear” と “what you think”

ケッセルは、あらゆる偉大なインプロヴァイザーが自らの内なる歌を演奏するちからがあると語ります。
内なる歌について、ケッセルは微妙にことばを使い分けます。
「what you hear」と「what you think」です。

まず「what you hear(あなたが聴くもの)」。これは内なる歌を聴き取ったもの、つまり自分の中に湧き上がってくる音のことです。コードを鳴らし、その響きを味わったとき、心の中に浮かび上がってくるもの。それが「what you hear」です。

次に「what you think(あなたが考えるもの)」。これは「what you hear」を吟味し、確信を持ったものです。ケッセルの言葉を借りれば、”be sure that what you hear is worth playing”――聴こえたものが演奏する価値があるかを確かめるということです。

あらゆる偉大なプレイヤーは、この「what you think」を弾く能力を持っているとケッセルは言います。

「内なる歌」であればいいのか?

ここで気をつけたいのは、「what you hear」=常に良い音楽ではないという点です。

一見、自らの内側から出てきたものを弾けることこそ、素晴らしいことに思えますよね。

しかし、ケッセルはこう警告しています。「ただ聴こえたものを弾けるからといって、それに本当の音楽的価値があるとは限らない」。つまり、内なる声を聴き取る能力と、それを評価する能力は別物なのです。

リックやパターンはダメなのか?

一方で、ケッセルは「リックやパターン」=ダメとは言っていません。

彼が問題視しているのは、思考なしにリックやパターンに頼ることです。

“reduced to playing formulas and licks and devices and patterns that you see on the fingerboard”(フォーミュラやリック、指板上に見えるパターンを弾くだけに堕してしまう)という表現からも分かるように、それらが唯一の手段になってしまうことが問題なのです。

つまり、機械的で生命力のない演奏、自発性も創造性もない演奏になってしまうことへの警鐘です。リックやパターンそのものが悪なのではなく、「what you think」を弾く能力を失ってしまうことが問題なのです。

「what you hear/think」の前提

ケッセルはレッスンの冒頭で、受講者に対して最低1年程度の演奏経験と、基礎的な音楽理論の学習を前提としています。

これは重要な点です。つまり、完全にゼロベースの思いつきを聞き取るわけではないということです。

ある程度の音楽的な語彙と技術を身につけた上で、初めて「内なる声」は意味を持つようになります。

ジャズ耳をつくるということ

いいフレーズの判断力は、理屈じゃなくて聴いた量で決まると思うので、まず浴びるように聴くのがおすすめです。
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実践:コードから生まれるメロディを掴む

ケッセルが提案する具体的な練習方法は、驚くほどシンプルです。

  1. コードを弾く(名前や構成音を考えずに、ただ響きを味わう)
  2. そのコードから6〜9音程度のメロディを心の中で思い浮かべる
  3. それを口笛や鼻歌で外に出す(外部化する)
  4. ギターのローポジションで探し当てる
  5. 違うポジションでも探し当てる

この「6〜9音」という設定も絶妙です。6音未満では挑戦として物足りず、9音以上では記憶が困難になります。そして重要なのは、それがスケールでもアルペジオでもなく、歌えるメロディであることです。起伏があり、言葉をつけられるような、本物のメロディであることです。

目を閉じること、繰り返すこと

ケッセルは練習中に目を閉じることを勧めています。「目を閉じると、より良く聴こえる。自分の思考も、心の中の音楽も、より良く聴こえる」と。

そして何より大切なのは、すぐにできなくても諦めないことです。間違えても、リックに逃げず、パターンに戻らず、何度も繰り返すこと。「うまくなる唯一の方法は、作り続けることだ」とケッセルは言います。

やがて、思考と演奏の間の時間差はほとんどなくなります。それが、ジャズ即興演奏家としての第一歩を本当にマスターした瞬間なのだと言います。

内なる歌を信じ、磨き続ける

バーニー・ケッセルの教えは、テクニックの話でありながら、同時に音楽家としての姿勢の話でもありました。内なる歌に耳を澄ませること。 それを吟味すること。 そして、それを形にする技術を磨き続けること。この三つが揃ったとき、初めて「自分の音楽」が生まれるということかもしれません。

今回の記事は以上です。

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